妊娠中は歯周病になりやすい?
妊娠中は、女性ホルモンの変調などによって歯周病になりやすい傾向にあります。妊娠すると女性ホルモンが血中に多く分泌されるようになり、血液循環を介して歯周ポケットにも行き渡りますが、この女性ホルモンによって歯周病菌の増殖が促されることが分かっています。さらに、妊娠中は唾液の分泌量が減少したり、つわりによってブラッシングが不足したりするため、歯周病が発症・悪化しやすくなります。
生まれてくる赤ちゃんを歯周病から守るには
歯周病がお腹の赤ちゃんの健康に影響を及ぼす危険性について、歯周病と早産や低体重児に関する報告が数多くされています。お口の中の歯周病菌が体内に入り込み血液で運ばれ羊水の中に入ります。歯周病菌が入ってくることで免疫細胞はお腹の中の赤ちゃんを守るために歯周病菌を攻撃しますが、その時、活性物質が放出されて子宮内で羊水とともに胎児の羊膜を傷つけ、早産につながるという仮説があります。また、そうした活性物質のひとつである“プロスタグランジンE2”という物質は子宮の収縮を促し陣痛を早めるという仮説です。アメリカのノースカロライナ大学の研究によると、歯周病のない妊婦の早産率は6%ですが、歯周病がある妊婦では43%となりました。歯周病のあるお母さんから生まれる子供が早産や低体重になるリスクは、歯周病のないお母さんの場合と比較して「約7倍」になるのです。妊娠を予定している方で歯周病がある場合には歯周病の治療を受けることをおすすめします。
赤ちゃんが生まれたら
母親の愛情表現も感染症の原因のひとつ?
生まれたばかりの赤ちゃんは菌を保有していませんし、虫歯や歯周病とは無縁です。しかし、母親の愛情表現のキスや食器の共有などによって菌が移り虫歯や歯周病の原因となります。乳歯が生えそろう3歳ころまで極力虫歯菌などの感染を防ぐことができれば、それ以降は口の中の常在菌が守ってくれるようになり、虫歯になりにくい体質をつくることができるといいます。できる範囲で、赤ちゃんに菌を移さないように、ご両親はもとより家族の方は虫歯の治療や予防に心がけてください。
食べ物の噛み与えをしない
食べ物を与えたりシェアしたりするときに、歯周病菌の感染が起こるリスクがあります。たとえば、お母さんが噛んだり口に含んだりしたものを赤ちゃんにあげるのは、できるだけ避けましょう。
食器を共用しない
食器を共用しないことも大切です。お母さんが自分の箸やスプーンで赤ちゃんに食べさせたりするのはできるだけ避けましょう。
家族が健康な口内環境に
家族の口腔内に歯周病菌が少なければ、赤ちゃんに感染する可能性も低くなります。
歯周病菌は家族の中で感染します
歯周病菌は人から人に感染するのかについて疑問に思う方も少なくないはずです。結論から言うと、歯周病菌は親子の間や夫婦の間での感染も認められます。
また、研究によると、2歳~12歳までの子供の歯ぐきの状態と歯垢を調べた結果、全体の約80%に歯肉炎もしくは歯周炎がみられ、全体の約3割の乳歯列期の子供でも歯周病菌が検出され、さらに2歳児でも歯周病菌に感染しているケースがあることがわかりました。
せっかく歯周病の治療に取り組んでも、家族間で感染し合っていては残念な結果といえます。大切な家族を歯周病から守るためにも、家族みんなで治療を受けることをおすすめします。
犬などペットとの相互感染にも要注意
最近では、歯周病の因子として注目されているのが、ペットからの感染です。歯周病は人間だけでなく、動物にも発生する病気であり、特に私たちの身近にいる犬や猫は高齢化が進んでおり、歯周病の発症率が増加しています。ある調査では、犬の約8割がプラークや歯石沈着などの歯周病の予備軍といえる症状を示していると報告されています。
動物は自らの痛みや不快感を伝えることが難しく、プラークが歯石化する速度が人間よりも早く、重症化しやすい傾向があります。1歳の時点で、約6割の犬が歯周病予備軍の症状を示しているとの調査結果もあります。
また、人間と犬の両方で歯周病の原因となるポルフィロモナス菌が同定されており、約70%の犬がグラエ菌を保有していることが分かっています。さらに、飼い主とペットの間で同じグラエ菌が見つかるケースも報告されており、人間と犬がお互いに歯周病を感染させる可能性が指摘されています。
ペットとの触れ合いは癒しのひとつですが、キスや口移しの不適切なコミュニケーションは避け、触れ合った後には手を洗う習慣を心がけることが重要です。