プラークコントロールで歯周病を予防する

歯周病は歯を失う原因となる一方で、口腔ケアを適切に行うことによって管理できる病気でもあります。プラークコントロールは、歯や歯ぐきの表面に蓄積する歯周病や虫歯の原因であるプラーク(歯垢)をできるだけ取り除き、プラークの増殖を抑制・管理することを指します。プラークコントロールの基本は、日常的な歯磨きです。歯周病や虫歯の予防には、プラークを完全に取り除くことが理想的ですが、これは不可能です。したがって、プラークを減らし、からだに悪影響を与えない程度にコントロールすることが重要です。細菌が歯周病や虫歯を引き起こすかどうかは、細菌の量と免疫力のバランスによります。理想的な状態は、細菌が少なくて免疫力が強いことですが、細菌が少なくても免疫力が低い場合は感染しやすく、逆に免疫力が高ければ一定の細菌量でも対抗できます。

免疫力を向上させることは難しいかもしれませんが、細菌を減らすことは比較的簡単です。毎日の歯磨きの方法や習慣を少し変えるだけで効果があります。ただし、毎日十分に歯磨きをしていても、歯磨きだけでは取りきれないプラークが残ります。デンタルフロスや歯間ブラシを使用することで、プラークの除去率が向上し、歯磨きの精度が向上します。これらの補助具の活用は、口内のトラブルを予防するために役立ちます。歯科医の定期検診や予防歯科では、治療メニューにブラッシング指導が含まれていることがあります。正しいブラッシング方法を学び、口内のトラブルを未然に防ぐためには、これらの指導を受けることが重要です。また、自分では取り切れないプラークや歯石は、3~4ヶ月に1回は歯科医や歯科衛生師によるプロフェッショナルケアで処理してもらうことが勧められています。

毎日の正しいブラッシングが大切です

毎日のプラークコントロール、つまり歯磨きの際に重要なのは、歯周ポケットに潜むプラークをしっかりと取り除くことです。通常、歯磨きは「1日3回、毎食後に」行うよう勧められていますが、都合が悪い場合は1日2回やしっかりと歯を磨けば1日1回でも問題ありません。ただし、食べ物のかすが口の中に残ると、30〜40分後には細菌の集まりとなり、徐々に粘着性が増して硬くなります。そのため、毎食後に歯磨きができない場合は、これらのかすを丁寧に取り除く必要があります。歯ブラシは、歯や歯ぐきを傷つけないように、鉛筆を持つような「ペングリップ」で軽く握り、余分な力が入らないようにします。ブラッシングの際は、力を入れすぎないようにし、歯ブラシの毛先が変形しない程度に軽く小刻みに動かして磨きます。1か所につき20回以上、歯並びに合わせて磨くことが重要です。

正しい歯の磨き方

ブラッシング方法には、歯ブラシを歯に直角に当てて磨く「スクラビング法」と、歯に対して45度に曲げて磨く「バス法」があります。歯ぐきが健康な場合はスクラビング法でも構いませんが、歯周病がある人や歯周病予防のためには歯と歯ぐきの間を重点的に磨くためにバス法が適しています。特に一番奥の歯は磨きにくく、プラークが残りやすい部分です。そのため、歯ブラシのつま先を斜めに入れて、歯の横からも磨くように心がけましょう。また、「奥歯の噛み合わせの面」「歯と歯ぐきの境目」「前歯の裏側」など、プラークがつきやすい場所にも意識的に磨くことが重要です。バス法を使いつつ、細かい部分にも注意深くアプローチすることで、効果的な歯磨きができます。

デンタルフロスの使い方

デンタルフロスや歯間ブラシは、歯と歯の間に溜まりやすいプラークを効果的に除去するのに役立ちます。デンタルフロスを使用する場合は、ハンドル付きが使いやすく、左右の歯の表面に沿って数回動かすようにして歯ぐきを傷つけないように心がけます。デンタルフロスは主に歯の隙間が狭い部分に使用します。一方で、歯間ブラシは歯の隙間が広い場合に適しています。歯肉を傷つけないように、ゆっくりと歯間に挿入し、歯と歯ぐきの境目にブラシを当てて前後にゆっくりと数回動かします。歯の隙間は人によって異なるため、適切なサイズの歯間ブラシを選ぶことが重要です。ブラシを挿入するときは、「きつめ」よりも「ゆるめ」を選ぶと良いでしょう。歯間ブラシは歯ブラシとデンタルフロスの後に使うことで、歯と歯の間のプラークの除去率が向上します。ただし、個々の歯や歯ぐきの状態によって最適な方法が異なる場合がありますので、歯科医と相談することが良いでしょう。

セルフケアで取れない歯垢は歯科医院でクリーニングを

歯科医や歯科衛生士によるクリーニング、通称「PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)」は、専門家が専用の器具を用いて口内のプラークや歯石を取り除くプロの歯のクリーニング方法です。このクリーニングにより、歯周病や虫歯の予防だけでなく、口臭の防止や、コーヒー、紅茶、赤ワインなどによる着色や、タバコのヤニによる歯の黄ばみも取り除くことができます。

PMTCの手順

  • 口腔内のチェック: 歯科医師や歯科衛生士が口腔内をチェックし、クリーニングの対象部位を確認します。
  • 歯面清掃剤の使用: PMTC用の歯面清掃剤を使用して、歯面や歯周ポケットの浅い部分に付着したプラークや歯石を取ります。
  • ハンドスケーラーによるクリーニング: 専用のハンドスケーラーを使用してエナメル質の歯面や歯周ポケットに付着したプラークや歯石を手作業で取り除きます。
  • 超音波スケーラーの使用: 超音波の振動によって狭いところについている歯石やプラークを取り除くための超音波スケーラーを使用します。
  • 研磨剤の使用: 歯の状態に合わせて研磨剤を使用し、歯の表面や歯間部など、部位に応じた器具を使って歯を磨きます。
  • フッ素の塗布: 歯を強化するためにフッ素を塗布します。
  • アドバイス: 歯磨きの指導や生活習慣のアドバイスを行います。
  • 歯ぐきのマッサージ(一部の歯科医院で行われる場合があります)

PMTCは通常、3〜4ヶ月に1回の頻度で行われ、口内の状態や患者の生活習慣によって頻度が変わることがあります。個別の状態に応じて歯科医と相談し、適切な頻度でクリーニングを受けることが重要です。